INTERVIEW
2015年は、10年振りのオリジナルアルバムのリリースや、若手ミュージシャン達とのコラボライブなど、精力的に活躍したANRI。長くやり続けてきたからこそ、今新たなスタート地点に立って輝いている姿がステキです。長い間温めてきたアイデアや、今だからこそトライできることを今年こそは形にしたいと意欲的な彼女に、2016年の抱負を聞いてみました。
─年明けはLAで迎えられたのですか?
ANRIそうです。日本でバタバタと仕事を終えて年末にLAに戻って、新年はLAで迎えました。
─日本はポカポカのお正月でしたが、LAはいかがでしたか?
ANRI何週間かずっと雨が降らなくて、水不足が続いていたらしいのですが、私が戻ってから1週間ぐらいたって、恵みの雨が降りました。でも、寒かったです(笑)。昼間はポカポカでも、朝方や夜は寒くて底冷えする感じ。でも、ずっと雨が降らないと山火事などの危険もあるので、雨は降ってよかったんじゃないかと思います。
─アメリカのお正月はどんな感じなのですか?
ANRIアメリカは「Happy New Year!」っていう気分なのは元旦だけで、2日からもう普通に動き始めるんですね。だから、おせち料理を食べてゆっくりまったり何日間か家族で過ごすという、日本のオーソドックスなお正月とは全く違う。日本で生まれ育った私には、ちょっともの足りない感じですね。やっぱり日本のお正月がいいなあとしみじみ思います。でも、仲のいいミュージシャンの自宅にお呼ばれして、みんなでワイワイとおしゃべりしたりセッションしたり、LAらしい楽しいお正月は満喫できました。
─2015年は、本当に盛りだくさんで充実した年でしたね。
ANRI本当に去年はいろいろなお仕事をさせていただきました。10年振りのオリジナルアルバムを出したり、若いミュージシャンと一緒にライブをやったり、バラエティに富んだお仕事ができました。昔から長年お付き合いのある音楽仲間達がまた戻ってきてくれたり、元気のいいクリエイターと一緒に仕事をする中で、自分の中にも新鮮な発見がたくさんあって、今までになかった、新たな出発地点に立てたような、そんな気がしましたね。
─行動範囲も、音楽に関しても、幅が拡がりましたよね。特に若い人達との接点は、常に意識していないとなかなかできないものだから、レコーディングやライブでガッツリ組んだというのは、すごくよかったんじゃないかと思います。それも、ANRIさんが若い層にもしっかり認知されていて、リスペクトされていればこそじゃないかなと。音楽があれば、世代を超えてこんなに素晴らしいコミュニケーションがとれるんだなって、とても感動しました。
ANRI私も、とても勉強になりました。去年一緒に仕事した旬のミュージシャン達は、みんな自分の目標をちゃんともっているんですね。私も、20代、30代の頃は、意識的にビジョンをもってやらなければと思っていたので、そんな人達からいろいろ相談を受けたとき、助言することもできたし、励ましたり背中を押したりできてよかったと思います。人間関係の幅が拡がりましたよね。
─今の若いアーティストの方達を見て、どう思われますか?
ANRI私はアメリカと日本を行ったり来たりしているので思うのですが、今、アメリカに来る日本人のミュージシャンやアーティストがすごく増えていますね。アメリカという国には、夢がある。特にポップスやロックなど、今の音楽のベースがありますから。だから、アメリカで成功したいと、若い方達は自分の夢を膨らませて、一生懸命活動しているんですよね。その増え方が、この数年ますます多くなってきたなと思います。
─昔は、アメリカに行くっていうのはとても勇気がいる大変なことだったけれど、今は簡単に行けますからね。
ANRIただ、行くのは簡単ですが、アメリカでちゃんと仕事をするというのはやっぱり大変ですよ。非常に厳しいです。いろんな審査がありますし、ビザの取得も難しいし。そういうことをよく知らないで、行けば何とかなるだろうと、ポン!と来ちゃった若者は、大変な思いをしていますね。私も、相談を受ければ紹介状や推薦状を書いてあげたり、なるべく彼らの夢を広げてあげたいなとは思っていますが。
─ANRIさんみたいに、ちゃんとロスに拠点を置いて、日本とアメリカ両方の生活をバランスよく維持しながずっとやり続けているミュージシャンというのはそう多くはいませんからね。
ANRIそうかもしれませんね。私は常に日本ではライブをやったり、レコーディングしたりと、しっかり仕事をやり続けていますが、アメリカに戻るとやはりそれなりに新しい情報が豊富だし、刺激されるものがたくさんあるんですよね。日本で流行るファッションも音楽も、アメリカ発というものがとても多いし。そういう意味では、両方でアンテナを張っていることは、とても意味があると思っています。
─やはりANRIさんの音楽のベースにあるのは、アメリカのポップスなのでしょうか?
ANRI私はずっとジャンルを決めずに、いろいろな音楽をやって来ています。去年は「NU MIX MUSIC」 という名前を付けて、世代の壁を越えたコラボジャンルを作りましたが、基本的に私の中には決まったジャンルはないですね。ただ、核にあるのはポップスかな。そこからいろいろ幅を広げて、いろいろトライはしています。曲を作ってるときや、ライブハウスでライブやるときに、今までやったことのなかったものを意識的に取り入れる感じですね。ベーシックなコンサートのときは、自分のオリジナルをメインにステージを作っているので、そこはそこで自分がそのときにやりたいサウンドを決めて構成しています。日頃から様々なジャンルの音楽にトライするというのは、大事だと思います。
─さて今年は、どんな目標をもって活動をしていく予定ですか?
ANRI私はこれまでずっと“マイペースで”という言い方をしてきたんですけど、“マイペース”って自分中心な感じで、イメージがあまりよくないかしら?(笑) 私にとっての“マイペース”というのは、自分の時間をしっかりと持ちながらやっていくということなのです。周りに振り回されずにね。これはずっとこれからも変わらないですね。
─“マイペース”は決して自分勝手ということではないので、とても大切だと思いますよ。
ANRIそうですよね。マイペースを保ちながら、やるべきことはしっかりと頑張ってやること、それが大事だと思っています。自分の立ち位置や周りを常に見ながらね。これは今だから言えることなのですが、ここに来るまでに、ホントに自分を見失ってしまったことが何度かありました。もうただただ苦しくて、立ち上がることができないんじゃないかというくらい。それはもう、いろんなことで苦しみました。様々なことが蓄積して、自分でも葛藤して、ライブの本番直前に倒れてしまったこともあったり。もちろん、本番は何事もなかったようにやりましたけど、実は、そういうことの繰り返しだった時期を乗り越えて来ています。でも、その都度自分が強くなっていたのも確かです。
─その苦しさは、どうやって乗り越えてきたのですか?
ANRI周りの方々に支えられました。支えてくださったのは、周りのスタッフもそうですけれど、いちばんはファンの方々の声でしたね。ファンのみなさんの声に、何度も励まされました。とてもありがたいことだと、今だからこそ、よけいに強く感じます。だから私は、これからもなるべくファンのみなさんが求めている場に立つということ、ファンの方々の声に応えていくという気持ちを忘れないでやっていきたいと思います。そういう気持ちが、今いちばん強いかな。だから今年は、ライブをもっとどんどんやっていきたいなと思っています。いろいろな形のライブをね。
─ライブと言えば、一緒にステージをやっていたコーラスの小島恵理さんが、昨年病気で亡くなられたそうですね。
ANRIそうなんです。ホントにとても悲しく辛かったですね。あまりに突然だったし、何も力になれなかった自分が悔しくて。仲間や親しい方とのこういう別れも、その度に心が折れそうになります。ただね、彼女の声はステージで作り上げる音の一部として、今も健在なんですよ。ステージに立つと、恵理さんの声が私のボーカルを優しく、力強く包んでくれています。ステージでは、今も、これからも、ずっと恵理さんと一緒。彼女が私に、もっとライブをやって頑張って! と微笑んでくれているようで、よけいにもっとステージをやらなきゃなって思えます。
─さっそく4月に、LAでのライブが決まっていますよね。八神純子さんとのジョイントライブが。これはまた、新たな試みではないでしょうか。
ANRIこれまで海外でもいろいろな形でライブをやっていますが、もっとちゃんとした形のライブをやってくださいっていう声が、アメリカにいるファンの方々から多く寄せられています。これはず〜っと前から言われていることなのですが、なかなかチャンスがなくて。アメリカには、いろいろな事情で渡米して暮らしている日本の方々がたくさんいらっしゃいます。企業で働いていたり、ご主人の都合で来られたり。若い方の中には、親元を離れてこちらに来ていて、なかなか環境に慣れないで苦労している方もいる。そういう方々が、心の安らぎや、勇気やパワーをもらうためにライブを見たいと言ってくださいます。それに応えるためにも、今年は、そういうことを積極的にやっていきたい、その手始めに、去年から八神純子さんとのコラボライブの話を進めてきました。これを皮切りに、今年は、今まで温めてきたもの、やろうと思いながらなかなか実現できずにいたものが、少しずつ形になっていく年になるような気がします。というより、形にしていかなければいけないなと思っています。
─八神さんとのライブ会場はどこですか?
ANRIトーランスっていう、日本の企業がたくさんある街で、日本人の方がたくさん住んでらっしゃるところです。
─それは盛り上がりそうですねえ! 海外でのライブと言えば、ANRIさんはハワイで何度も大きなコンサートを成功させていますよね。
ANRIハワイでは、10年間で7回ライブをやっています。あれこそ、ホントに誰もやっていなかったことだったので、1回目、2回目、3回目あたりまでは大変な思いをしながらやりました。それがだんだん話題になり、人も増えて成功していって、最後のコンサートは本当に大成功でした。
─私もずっと参加させていただきましたが、7回目のあのコンサートは本当に素晴らしかったですよね。あの感動は今でも忘れられないです。
ANRI回を重ねる度にファンが増えていって、最終回は地元のローカルのファンがすごかったですね。日本からももちろんファンの方がたくさん来てくださいましたし。地元でもプロモーションを根気よく続けた結果だと思います。
─そうそう、ANRIさんは地元のラジオ番組にも、積極的に出演してました。
ANRIテレビでも、1日中私のライブのことがニュースで流れていたり。現地でCDも販売しましたからね。だから、今でもハワイに行くと、ライブをまたやってくださいって声をかけられますよ、日系人の方に。もちろん私も、是非また何かやりたいと思っています。
─年末にちょっとお話したとき、ANRIさんは、肉体的にも精神的にもヘルシーでいたいと語っていらっしゃいました。とってもいい言葉だなと思います。
ANRI人間、生きていればいろいろあるわけで、辛いことや苦しいことがあるのは当たり前ですよね。過去に起きたことは過去のことで、そこから前向きに前進していくことが大事。そのためには、メンタルもフィジカルもヘルシーでなきゃいけないなといつも思っています。環境というのは自分で作っていくものですから、そこはいろいろ自分で考えながらやっていますね。ステージやレコーディングでも、時には違ったミュージシャンとやってみることによって、様々な発見があったりします。また、一生懸命試行錯誤している若いプレーヤー達を起用することで、そのパワーをもらったり、逆に彼らにいろいろなチャンスや場を作ってあげたいし、経験も積んでもらいたいなとも思うし。そういうことは、アメリカという厳しい世界の中にいたからこそ、学んだことだと思います。
─最近、そんなアメリカで、70年代、80年代にHITを飛ばした人達が、また来日していますね。
ANRI私が一緒にレコーディングしたアメリカのミュージシャンたちが、日本のブルーノートやビルボードでライブをやっていますね。なんだかとても嬉しいです。あの70年代、80年代っていうのは、私にとっても、音楽業界にとっても、貴重な時代だったから。
─あの時代、音楽は特にエネルギーがありましたよね。その時代にANRIさんは大活躍して、本当にいい経験をされ、いい作品を残している。
ANRIホントにいい時代に生まれたと思います。いい音楽にたくさん出会えたし、全てのものが、ちょうど発展途上で勢いがあった。音楽もファッションもエネルギーがありました。今はもうやり尽くしちゃった感じがありますが、だからこそ、ここからまた何かを作っていかないとね。みんな「無理だ!」ってすぐ言いますよね。でも、私は出来ないことはないと思います。不可能は絶対ない。NOっていう前に行動しようよって。それで成功したら、みんながHappyなわけですよ。ハワイの成功なんかがいい例だと思います。あれができたのだから、また海外で何かできる……今またそう考えている自分がいます。
─同じことをまたやるのではなく、今のスタンスで何が新しくできるかっていうことですよね?
ANRIそうなんですよ。常に夢は追いかけていきたいなと。4月のライブに関しては、すごく今いい感じで進んでいます。チケットも既に好調みたいで。是非とも日本のファンの方々にも参加していただきたいなと思っています。まだアメリカに来たことがない方は特にね。私は16歳のときに初めてアメリカに来ました。右も左も全くわからなかった。その中で初めてレコーディングして、そこから自分の目標がどんどん拡がっていって、今ではこうやってアメリカに住むようになりました。今回のライブは、ライブを見てもらうだけじゃないんです。言葉がしゃべれるしゃべれない関係なく、今回の八神さんとのジョイントのライブをきっかけに、アメリカっていう国を1回感じてもらいたい。あの時のライブがきっかけでアメリカに住むようになりました、とか、新たな目標ができましたとか、そういう声をたくさん聞きたいんですよ。アメリカにある企業で働いていらっしゃるご家族がどういう思いであちらで生活してるかというのも、きっと感じることができると思います。そういう出会いが必ずあるので、今回のライブが、ライブを見るだけではなく、もっと深い意味があるような気がしますね。そういうチャンスにしていただけたら嬉しいです。
─ANRIさんのライブがきっかけで人生が変わっていくなんて、ステキですよね。
ANRI今年はまたツアーも考えているので、それはまたwebサイトからもご連絡します。とにかく今年も今までやって来たその思いというのは変わらず、どんどんいろいろなことを自分の中で企画したり考えて、実現させていきたいなと思っています。 この時代、精神的にダウンしてしまっている人が多いですから、そういう人達をどうHelpするかが私の使命だと思います。でも自分に余裕がなければ、Helpなんてできませんよね。自分が疲れて、それが仕事に悪い影響を及ぼすのがいちばん怖いので、そこはちゃんと気をつけながらね。音楽って、精神的にいちばんいいHelpになっているんじゃないかと思います。ステージで歌っている自分自身も、お客さんの表情、オーディエンスの反応で、すごく救われることがあります。泣いたり笑ったり、お客さんの喜怒哀楽の表情がステージの上から見えることがあるのですが、それだけで結構感動してしまいます。 あとは、今までやってきたことを整理して、自分の中でまとめながら応用しつつ、今年はそれをうまく形として出していきたいなと考えています。新しいことはいっぱいやってきたのですが、いちばん大事なのは、自分がやりたいと思うこと、ファンの方が求めてることをどう自分の中で消化して提供していくかということだと思います。とにかくみなさんが健康で、穏やかに暮らせる1年であることを祈りつつ、今年もよろしくお願いします。